釣り

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「やあ。誰かと思えば君じゃないか」

「やあ。誰かと思えば君じゃないか」


「思いっきり目が点になっているけどどうかしたの?」

「やっぱりわかる?実はねどうにもズルいと思うことがあってね」

「ほう」

「ある会社の面接があってね。僕を入れて15人が面接をしに来たんだ。それも全員男ばかり。1人ずつじゃなく15人全員の面接なんだ。1人ずつ自己紹介をしたんだけど必ず趣味のことを聞かれると「釣りが趣味」と僕以外の14人はそう答えたんだ。僕の番がやってきて「趣味は筋トレです」と答えたんだ。そしたら後日僕だけ不採用になったんだ」

「理不尽だよね。確かに事あるごとに「趣味:釣り」と人物紹介に必ず見かけるよね」

「そうなんだ。しかも僕が受けて落ちた会社は主に女性用下着メーカーなんだ」

「女の子を釣る目的で受けて釣りが趣味ですと言ったら受かるのも納得いくよね」

「しかし色の黒いガテン系の男が威勢よく釣りが趣味ですと答えたら説得力あるけど、どう見てもお前釣りどころか運動神経が悪い家でゴロゴロとスマホを一日中いじってそうな草食野郎が釣りが趣味ですと答えたら…」

「まあなんとなく趣味は釣りですと言ったら即受かるんじゃねえ?という思考しか頭にないニートが言いそうなパターンだね」

「でも釣りはなんだか楽しいよね。実を言うと僕は海釣りが趣味でね小6のときに岸壁で釣りをしていたらカジキマグロを釣ったんだ。自転車に乗せようと思ったんだが、何せこのカジキマグロはミニバンよりもデカいやつだったんだ。家で家族に見せようと思ったのだが地元の漁師さんが解体して調理してその場で食べて処理したんだ。結局誰にも僕が巨大なカジキマグロを釣ったという事実を誰にも知られることはなかった」

「大きな喜びのあとにより巨大な後悔がのしかかってきた気持ちだね」

「でも釣りをすることはやはり男のロマンだと思うんだ。それで君は釣りは好きかね?」

「ごめん。僕の趣味は手芸とクッキー作りなんだ」

「いいお母さんになれることを期待してるよ」

「ありがとう。それじゃ」

「また」


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